ヒト族の大学生アマーリエは都市市長の娘という立場から、異種族と政略結婚を命じられる。
彼女を待っていたのは草原の国の一族の長。色移ろう空と太陽。
そしてもう失われたと思った恋。最初で最後の真実の恋。






「幸福は、あなたたち(・・)の幸福は、一人で決めるのではないの。幸福を、選びたくとも選べない子がいるのよ」

 幸せだ。幸せなのに、背中に回した手が、何かを掴めなくて震える。

「ここに来るのを恐れていた風でもありました。以前から、ここでの何かに怯えている素振りはありましたか」
 恐怖、疑惑、不信。うっすらではあるが、故郷に抱くには少しばかり暗い。

「あの子の父親が、あの子を見ていないということかしら」
「……エリカが、身代わりだと?」



「奇襲! 奇襲!!」



「奇病が流行しているとある。病を得た者は、身体に花のような赤い跡が現れる」
「リリスに及ぶ危険性は」
「未知数です」



 愛する人の死を思うなんて、この世の恋にはこんな残酷な感情がある。

「市長が他都市に提案した。君を救い出すために……」



「君を大切に思っている人間を、君は蔑ろにしているんだよ。君自身を粗末に扱うことで」
「それでも、私は、みんながいなくなってしまうことよりもましだと思う」
「君はただの女の子なんだよ……」

 なのにどうして、幸せが許されない。




「アマーリエがココにいたいっつーなら、俺は、アマーリエの側にずっといる」




 職員が喋る後ろで電話がひっきりなしに鳴っているのが聞こえる。
 なんとか聞き取ってテレビを点けた。ニュースが流れている。
『リリス族とモルグ族の連合軍と思われる集団が都市に向かっており……』





 誰もが一歩ずつ踏みしめる死への階段を、踏み外して転がり落ちていく感覚。
 痛い。痛い。

 自分とあの人の間には、横たわる時間の流れがある。変わらないものなんてない。絆は切れてしまう。
 そうなったら寂しいでしょう? ひとりで生きていけた方が自分に優しいでしょう?



 綺麗になったよと言われた。それは、アマーリエが時を進めていることに他ならない。彼らよりも、数倍の早さで。

GRAYHEATHIA 第3部 Heath
and Last scene...The flower will never die.


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