「例えば、開いたばかりの花の色。雨上がりの虹の大きさ。夕日に染まった木の葉の匂い。初めて降った雪の温度」
「なあに、それ」
「美しいものたち。君と見た世界の欠片たちは、時の流れの中で不確かになっていくかもしれないけれど、僕はずっと覚えてる。僕等が見たものとは別物になっているだろうけれど、誰かの心にもそれらを綺麗だと思う心はあるだろう」
「ええ、そうね」
「心は不変なんだ。どんな心の形でも、美しいと思う心は変わりなく存在している」
「私は今、そんな心に溢れている世界を美しいと思うわ」
「僕もだよ。たくさんの人々が生きるこの世界を、美しいと思うよ」
「私たちと同じ会話をした人は、きっとたくさんいるんでしょうね。そうだと良いと思うわ」
「そうだね。ねえ。世界は綺麗だね」



「エルフィン? エルフィーン! ご飯よー!」
「ライル! そろそろ帰ってらっしゃい!」
「はあい!」
「今帰るわ!」

「それじゃあ、またね」
「ええ、また明日」





永 遠 を 知 る 哲 学 者

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