誰かが紡いだ楽園の歌

誰かが 世界には闇などないと言いました
誰かが 世界には本当は闇があったのだと言いました

光は世界を満たし始めた時から その名を確かにしました
闇は光が満ちた時から その名を忘れられていきました

子供たちよ 閉じた眼を開きなさい
あなたが生まれたところには最初から闇も光もあったのです





剣は花を撫でて力の在り方を考えました
花は剣に触れて己の在り方を知りました

花は剣に 剣は花に
別の物になりたいと願いました

相手に優しくある為に
相手に相応しくありたいが為に





夜明けは星に手を引かれてやって来ました
暗闇に包まれる大地に
頼りない足で降り立とうとしています
夜明けが心細く震えて星を見上げた時
星はゆっくりと消えていくところでした

離れなければなりませんでした





女神は夜明けを生みました
それはまだ深い暗闇の中にあります
やがて星がやって来て夜明けを導くでしょう
花は立ち上がりそれを迎えます
放たれる光が夜明けを待つ者の闇の剣をなぞり
そうして世界は再び生まれるのです





誰も聞かぬ歌は なかった事になるのでしょうか
思うだけの声なき歌は 歌の形ではないのでしょうか

それでも ただ

私はここに座り歌い続けます
最後に紡ぐ歌は果てして破壊か再生か

それは私の元に来る次の世界だけが知っているのです


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