零ゆる花のシャングリラ

千年の花咲かすなら
別離を越えた海の果てに記憶の種を撒くがいい
銀の群雲 天の宮 光の満ちて
零した涙を糧として悲哀を宿していくがいい

時を越えた命の雫
数多優しき花香しい

強さに痛む瞳の奥
お前の涙は私の光
狂おしく鼓動は打つ
熱でぬくもりで蕩けゆく

この声はお前の
この瞳はお前の

弱きにくじける指先は
私の愛でお前の愛
甘く痛む棘のまま
繰言は永遠にとこしえに

あの空はお前の
あの風はお前の

千年の花咲かすなら
囁きの続きを口にして彼方を越えていくがいい
耳朶打つ声に 空の青 歓びの空と風の音色
そこに光を見出して私に会いにくるがいい

その光は私の
輝きは私の

零ゆる花
お前をいだく


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楽園

君の何万遍の花を繰り返して
永久の中に落ち込んだ爪先を拾った
常闇の褥に涙を落としていた
その頬の月の跡

星の野原 百合の花
知らせは鷺が持ってきた
黒い飾り編みに襞を寄せた
あなたの手の中の雫 魚の春は凍え
千年後も別れは消えず
世界は変わらないと知っていた
春が行った 届くはずもないから
凍える大気だけが心に残る

愛の扉の琥珀の色
紅花の棘の微笑みが君の香しい血
白い首に散る花びら
摘まみ上げて溶けて消える

解けて去り行く
幾万遍、君の咲き誇る花


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廻帰する麗華

永く永い願う言の葉
我が身、我が手のひらから零れる前に
花咲かんと祈りを捧げ
忘れ難く胸に抱きて
想うあなた

落ちる散る降り落ちる あわいの星の燃え尽きるまで
白いかいなに我を忘れ
海の蒼の呪いを芽吹き
わたしはたゆとう
打ち寄せる波に洗われて

永久のいましめと記憶の水が渇きを癒し
移り変わる種と空が熱を奪い
刻む時と痛みはいつもわたしとともにある

残響する恋情 わたしの運命
愉悦する情愛 あなたの残酷
核になったわたしがあなたを動かす
今から生まれくるものを わたしたちだけが知っている


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花を果たすアルカディア

草原果てて 風消える
名もなき荒野 あなたが居ない
白木の朽ちる音がする
求めても
胸に抱いた卵は孵らない
求めても

廻転する天球の頂に あなたの星が落ちてきた
大地を燃やした火の海に 花の灰燼が白く染めゆく
別れの歌を奏でる千鳥
狂おしい千歳
時を放て

大地の腐る音がする
願っても
運命に触れた者は還らない
願っても

雷降りて 天降る
時雨れる世界の息吹
呼んでいる
呼んでいる

朽ちる散る花の咲く色
卵になって夢を見る千鳥
愛おしい千年
時が
生まれる


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