ねむりつく墓はあなた 言葉は土塊 時を経た

  さえずる小鳥はわたし わたしの歌を風は覚えた

  恋歌よ 永久に響け 地底の骨にも聞こえるように

  錆びた銃弾で開いた穴に 誰にも知られぬ花を咲かせよ








「それでも、戦うしかないんだ」








エデン。あるいはオブ・イースト。それがこの街の名前だった。
三段重ねのケーキのようになった、階層都市である。




「UGの殲滅を!」
「第一階層の平和をとりもどせ」
「『犯罪者』を許すな!」




「刺青で目つきの悪い、でもかっこいい男? ふうん、刺青ねえ」
「ちょっとどきっとしたよー。因縁つけられるんじゃないかってさあ」
 道を横断しながら、彼女はきらきらグロスの口をにんまり曲げた。
「それって――アンダーグラウンドだったりして」





三つの階層があるエデンには、もう一つの階層の噂がある。
犯罪者の掃き溜め、表に出てこられない者たちの巣窟。
犯罪と暴力と不秩序の世界、アンダーグラウンド。





「ちょ、ちょちょちょちょ、ちょい待ち!」
引き止めようとしながら叫ぶ。彼はちょっとだけ歩調を緩めた。
「あなた誰!?」
「クリーンなレジスタンス」

レジスタンス? そんなわけあるか!






 再びパン、パン、と音がした。悲鳴は、もうすでにパニックを引き起こして、大きな人波を作り出していた。
(撃たれた)
 乾いた音、倒れた男性、排気ガスに混じる煙のにおい。
(銃だ。撃たれたんだ。私を……私を狙ってる!)





 背後に、何かが降り立つ気配がした。
 振り返ったそこで、黒い何かが、血のような歩行者信号の赤を反射していた。

(う)

 笑う唇が見えた。

(た)

 引き金を引こうとする華奢な指先が捉えられた。



(――れる)





「あたくしは『三番目のエリザベス』。タカトオの【魔女】と呼ばれているわ。綺麗な『狩人』さん、あなたのお名前は?」



 彼は、ゆっくりと口を開いた。

「俺は、アンダーグラウンド。お前たちが、UGと呼ぶ者の一人だ」













「ようこそ。我らが地下世界、アンダーグラウンドへ!」







2011年 秋 公開予定