文章修行家さんに40の短文描写お題 配布元(文章修行家さんに40の短文描写お題) 00.お名前とサイト名をどうぞ。また、よろしければなにか一言。 サイト名:吟遊伽語 名前:瀬川月菜 「戦士達のゆりかご」熱が高まってきたので書くことにしました。ゆりかごをお持ちでない方に登場人物紹介をさせていただきます。【こちら】からどうぞ。 この世界がとても好きなので、できるだけたくさんの方々に知っていただこうと思って書きました。どうぞ 楽しんでいただけますように! 01.告白 ディオール さよならを言おうと思っていた。なのに彼女が微笑む度に別離の言葉は取って代わる。口をついて出た言葉が、一層彼女を笑わせる喜びに。 02.嘘 リゼロット 一国の姫が流れ人に思いを寄せる。その愚かさを冷笑し、相手が呑まれて黙れば何も言う必要はなかった。塗って固めた嘘を告げることも。 03.卒業 リゼロット 別れは告げた。拭わねばならぬ涙は剣に必要ない。持ち上げる長い裾を捨て、王女は慣れない為に傷付いた手で決して剣を離すまいと誓った。 04.旅 ディオール 人生は旅、流れ流れる我が身よ。酔っ払いの歌はならば魂は何処へ行くと続く。がなり歌が響く中、あの人の側がいい、囁いて酔いに落ちた。 05.学ぶ アルト/ディオール 「殿は堅い」と変更したさん付けも堅えよと笑われどうすればいいのかと困惑すると普通に呼べと言われた。親友にさんなんて言わねえだろと。 06.電車 リオー/リゼロット それは装飾のついた箱にしか見えないが込められた魔法で魔法陣に沿って動く玩具だ。叔母からの新しい贈り物は彼の目を輝かせた。 07.ペット ドーター 屋敷には何十匹と猫が闊歩しており明らかに飼い猫だと知れた。拾ってくるんですのと奥方が言う。一体誰が。「……私だ」ぅおーい、教官。 08.癖 リゼロット しばらくは気付けば腰の左を探っていた。今は意識してドレスの裾を持ち上げ彼女は微笑む。お前がいなくなって数年が経ったよ。 09.おとな フォニック 侍医が側近に告げる言葉は知っていたから。大丈夫、子を生すまでは死なないよ。意識を熱と暗闇に揺らしながら、彼は大人たちに微笑んだ。 10.食事 ナルキス 獲物が倒れる。北方の酒も賭けに冬山で狩りをする面々にも慣れた。だが何故自分が食事調達係(囮)なのだ? ああ旨い猪鍋。僕を囮にして。 11.本 コールセン王家 それは温かい部屋の中、かあさまが好きでにいさまが微笑んで読んでくださり、とうさまがまたそれかと笑う。大好きだった物語。戦神の戦士。 12.夢 リゼロット 天は輝き蒼穹は果てない。耳に残る彼の声。最後に触れた唇はただ優しく熱い。夢のような恋をまだしばらく夢に見ている。涙とともに。 13.女と女 シャアラ/リゼロット 久しぶりに会ったねえさまは赤い目をして、しかし優しい表情でお茶を淹れてくれた。何も言わなくていいと告げている湯気が、目に染みた。 14.手紙 リゼロット 席を立てば皆が動きを止めた。手から紙片を奪い見もせず破り捨てる。「暇なら……稽古を見に来ないか?」戦う王女はそう面白くないぞ? 15.信仰 王妃 風が吹き天上から花を降らせた。愛する国王は民の声を受けて丘を降りていく。純白の裾を美しい大地に広げ、王妃は一粒涙を零した。 16.遊び ディオグスト 神に戦は起こらぬのに戦士が必要なのですか。時の無い天での問いは戦神を微笑ませた。「神が戦わぬと誰が決めたんだい。滅びるよ、神も」 17.初体験 ディオール やわやわとした赤子はこちらを見てふやけた。驚くと抱いてみろと笑って言われ、慎重に受け取る。重い。温かい。初めて感じる人の重み。 18.仕事 ワグナー 最初は木登りで、続いたのは悪戯、授業逃亡。ご成長されついに覚えられたのは脱走だった。追いかけるのは誰の役目だ。「……姫ー!!」 19.化粧 リゼロット 亡くなった母の甘い香り。いつかあなたにも粧ってあげましょうね。そう言われたのに。紅白粉が匂う度、固くなった指先を見つめている。 20.怒り リゼロット/ディオール 振り上げた手は頬を打った。「二度と言うな!」あの方は幸せにしてくれるなどと。打った手で頬を拭う。涙は怒りのせいだ、きっと。 21.神秘 ディオール/リゼロット 傍目の優雅。輝く大広間。「どうした」首を振る。「ならその馬鹿面をなんとかしろ」機嫌の悪い姫君が、曲に合わせてドレスをさばく。 22.噂 ディオール 頭を下げると、困惑、続いて涙による声の裏返り。「姫君と、お幸せに……っ!」身を翻す令嬢。噂を訂正する暇もない見事な駆け足。 23.彼と彼女 リゼロット/ディオール 喜び、楽しみ、優しさ、感情ある表情が彼女は好きだ。「何か?」「む。いや」隣の横顔は強く優しい眼差しで彼はそれがいつまでも好きだ。 24.悲しみ ディオール 【力】を使った。剥がれていく力のなか彼女の姿が閃き、苦しみを覚えてせめてと空に己の悲しみよりも光を満たした。――世界に、光が降る。 25.生 ディオール/リゼロット 傷ぐらい手当しろと言われ、奪われた包帯を巻かれた。銀色の頭が目の前で揺れる。傷は既に跡形もないのに、触れられた箇所は熱かった。 26.死 ディオール/リゼロット 扱い慣れぬ手中で髪飾りが音高く折れ、髪を上げていた彼女は振り返る。「古かったからなあ」優しく微笑むので心底申し訳なく項垂れる。 27.芝居 ディオグストのディオール 何の為に私は作られたのでしょう。消えた弟を知る兄は呟く。天上は絶えず溢れる光を世界と生者に降らし、まるでこれは物語の舞台だった。 28.体 リゼロット/ディオール/アルト 「お前良い体だなあ。ちょっと触らせろ」「はあ」ぺたぺた、めくり、ぺたぺた。「姫君セクハラですよー、ディオールも抵抗していいぞー」 29.感謝 ディオール 親友と教官は怒鳴りかけた唇を結び、叫ぶ姫君を抱えて走り出す。主の加護が彼らを守るだろう。感謝を彼らに。勝手な息子を許す我が父に。 30.イベント リゼロット 姫君の訪問は子どもたちを沸かせた。皆こぞって花を贈り誰しも祝福を頬に受ける。生まれてきてくれてありがとうと、母からのように。 31.やわらかさ リゼロット/??? 「好きなことをしなさい」なら姫君のようになれますか。大人を意識して紡いだ言葉。姫君は笑って手を握ってくれた。柔さのない固い手で。 32.痛み ディオール/リゼロット 手首を掴み身体ごと放る。瞳は戸惑い瞬くが許さない。「だから気を付けてくださいと」傷に指を這わせる。くすぐったいと文句が飛んだ。 33.好き ??? 手を繋いで歩いて笑って触れて口付けて。最後にその言葉を囁く。「――」 目が覚めて呻いた。なんて正直な。 34.今昔(いまむかし) リゼロット 目覚めると目元が濡れていたので、光に誘われ庭に出る。朝露の輝きで舞う蝶は差し出した指先に止まり、彼女は敢えて蝶を解き放った。 35.渇き アルト/ディオール 水を入った杯を攫われる。何故こちらのを取ると見ていると相手はにやっと笑った。「いやん間接キスー……ってどこから出した黒剣!?」 36.浪漫 シャアラ/ディオール 三人薙ぎ倒された。腕一本を振るった青年は踏みにじられた手巾の砂を払うと丁寧に差し出す。「どうぞ」その笑顔。恋に落ちた瞬間。 37.季節 リゼロット/ディオール/アルト 「夏? 上は中着に短い下衣もごっ」「野郎どもを喜ばせるようなこと言わんで下さい!」ディオールは知っていたので平然としていた。 38.別れ リゼロット/フォニック 兄と手を握っている。鐘が鳴る。城下に弔いの火が灯る。母上に娘らしくなくて申し訳ないとお伝えください。いつまでも愛しています。 39.欲 アルト/ドーター 「くそー勝ちたかったぞー!」「私は息子にしたかった」「ま、次に白黒つけましょうよ。出来るよう神様にでも頼みましょうかね」 40.贈り物 ??? 自分に数々の花をくれる赤い子を撫でる。若い自分に似た子は遠い目をして花咲く丘からひとり眺めた。遥かな国、神が与えてくれた生を。 |