父と兄は簒奪者。
その血を引く、私も裏切り者。
窓の向こうの街は、暗く、青く、沼の底のような暗色に沈んでいる。
(凍れる要塞。これがエカルトリアの首都)
馬車に乗り込めば、遠ざかっていく街。
もう振り向かない。戻らない。
(愛されてみせる)
――魔女の呪いに、勝ってみせるわ。
「お前の愛とはなんだ。ただの押しつけか?
同じだけのものが返ってくることを期待しているのだろうが、無駄だ。
お前が最も愛しているのは、自分自身だからだ」
『愛されたい?』
冷たい笑みを含んだ声に、リサの背筋が総毛立つ。
『愛していると言われて、優しく抱きしめてもらいたい?』
『お前はそれを望めるよ。大事なものを捧げさえすればね』
いや。いやだ。お願い。言わないで。思い出したくない。
――お前なんて、生まれなければよかったのよ。
失われた愛がある。
ではその愛はどこへ行ったのだろう。別の誰かの胸に、宿ることもあるのだろうか。
紅の魔女が笑う。
最後まで歩き続ける。
道が潰えるところまで、行こう。
「――エリーゼリサ・アディン・エカルトーンは魔女に望む」
氷花の戴冠〜あの光が貴方を焼き尽くす前に
それは、王が呪われる国の物語。
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