SS 眠りの中も、目覚めた後も
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 午睡から目覚めると、冷たい汗は肌の上で熱に変わった。リワム・リラが寝起きのせいだけではなく、午後の太陽による熱気が辺りを霧のように揺らめかせている。さわさわと緑の音がする。するとすぐに風が通り抜け、所々で垂らしている紗幕がふうわりとした。
 寝台にうつぶせていたから、曲げていた腕がきしきしとして、胸がつぶれた痛みがある。大きくため息をつきながら伸びをすれば、視界がはっきりとしてきた。
 かさりと音が聞こえたのは、幕越しだった。庭の音だと思ったのにそれは人が出すもの。椅子に座った彼が、本をめくって立てる音だ。
 彼が目を上げた。紗越しに見つめ合う。
 本を置く、ことりという音。
 足音も立てずにやってきた彼が幕を少しめくる。微睡みから身体を起こし、それを迎えた。
「ああ、起きたか」
「カリス・ルーク様」
 寝起き姿は、以前なら慌てて整えていたのだが、今はさりげなくできるようになっている。自分の髪を梳き、襟元を直しながら苦笑する。
「す、すみません、眠っていました。起こしてくださればよかったのに、今日はどうされたのですか?」
「お前の寝姿を見たかったんだ。起こしてすまなかったな」
 眠りは、二人にとって大きな意味を持つ言葉だ。
 眠っている間のことは何も覚えていないけれど、でも分かる。私はきっと、あなたの夢を見ていました。でもそういうことは、言わなくてもきっと彼には伝わっているだろう。紗を戻して彼は去っていき、リワム・リラはもう一度横になって、今度の夢は覚えていようと目を閉じる。

120423拍手お礼初出 120627改訂
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