Epilogue 
     


  高遠紗夜子 & トオヤ  

 
紗夜子は高校を正式に退学した後、アンダーグラウンドで出会った喫茶店のマスターに弟子入り、料理の腕を磨く。たびたび出生の秘密を知る者たちに狙われるも、仲間や友人たちの力を借りて切り抜けた。やがて働きながらコーヒーマイスターの資格を得て、貯金で喫茶店を開く。喫茶店は顔なじみやUGたちのたまり場になっていった。
トオヤはしばらくキリサカ氏の息子として表舞台に立っていたが、「やっぱ向いてねえ」の一言で引退。エデン革命のために行き場をなくしたUGたちをまとめて、特殊警備会社を立ち上げる。しかし、代表のくせにいつまでも現場主義の隊長として有名だったらしい。
二年後に結婚。一男一女に恵まれる。長男・悠星(ユウセイ)長女・夜乃(ヨルノ)の四人家族だった。




  ジャック & 江上七重  

 
双方ともに官僚としてエデン運営に携わる。ジャックはその官僚らしからぬ容姿から若者を中心に支持を集めるも、やはり胃が痛いことが連続したらしい。父親たちから政略結婚を勧められ、七重と結婚し、引退。特に結婚を望んでいなかった七重だったが、ジャックのことは気に入っていたので承諾したという。結婚してから恋愛感情が芽生える、という生活を送り、ジャックは七重の尻に敷かれたようだ。
子どもは一男一女。長男は政治家に、長女は幸せな結婚をした。




  ディクソン & シオン  

 
ディクソンはエデン革命後の政府高官を警護するSPのリーダー格となり、活躍。表舞台には出なかったが、裏でボスやライヤ、ジャックやナナエたちを助けた。
シオンはしばらく光来楼の高級ホステスを続けていたが、革命後すぐに男の子に恵まれる。子どもっぽさが抜けない弟子たちの先輩夫妻としても助力した。




マオ
エデン革命後、ディクソンの下についていたが、警備会社を設立したトオヤの手助けをするために所属を移す。トオヤの引退後は、代わって会社を引き継ぐ。
ジャンヌがユリウスといるので結婚は無理だろうなと思っていた、その二十年後、元第三階層者だった女性と結婚。二十歳以上も年下で、革命後の動乱で娼婦になった女性だった。曰く「ほっておけなかったんだよ」。三男一女に恵まれた。




村木茂
エデン革命後、第二階層を辞し、第一階層で医師、研究職を行う。ライヤの支援で病気の娘を治療することができ、以降、アンダーグラウンド派の協力者として活動する。そのため、第二階層の技術を第一階層に持ち込んだパイオニアのような存在として語られるようになる。
たまにジャンヌのところにユリウスの様子を見に来たり、UGたちと研究、開発をしたりと忙しい日々を送る。だが、人間関係に悪評だらけのユリウスには、元気になった娘をなかなか会わそうとはしなかったという。




高遠亜衣子
紗夜子と和解し家督を譲ろうとするも、元第三階層者の支持にタカトオの名前は必要と説得されて、エデンの政府高官、タカトオの当主として生涯を送る。
第三階層者から支持を得、かれらのために政府内では『第三階層主義の悪者』として振る舞っていたが、そのことをUG関係の閣僚たちは理解しており、その暖かみが居心地が悪いような、幸せなようなという複雑な心境だった。
生涯未婚だったが、孤児を引き取り、養育。その子に当主の座を譲る。




  ジャンヌ & ユリウス  

 
ユリウスは高校卒業後、大学、大学院と進学。遺伝子学研究者、文学者としてマルチな活躍をする。高校を卒業する頃には子どもっぽすぎるところは薄れたが、自分の美貌の使い方を理解したらしく、小悪魔と呼ばれ、男女問わず人間関係の問題が多かった。その度にジャンヌが解決してしまうため、ユリウスを巡っていたかれらがいつの間にかジャンヌを『姐さん』と慕って集まり、二人の自宅は人の出入りと笑い声が絶えなかったという。
晩年のユリウスは、自らの誕生にまつわる秘密や旧エデンの体制を暴露した手記を発表。未婚で子どもはいなかったが、紗夜子たちの子どもや孫をかわいがり、穏やかな最期を迎えた。
ジャンヌは、当時じわじわと手を広げ、軍事政権を敷いてエデンを掌握しようとしていたエデン軍に潜入。自らが司令官となって、その軍事政権確立を未遂で阻止する。混乱を止めた後は、信頼の出来る後任に軍を託し、その頃最新技術として注目されていた航空事業の開発に技術を提供していたが、軍の要請を受けて、機械生命体として世間公表された上で、エリートとして注目されつつあった航空官をまとめる航空部隊のトップとなる。数々の伝説を成し遂げ、【炎の魔女】と呼ばれるようになるが、本人は魔女と呼ばれるたびに苦笑していた。




  ボス & ライヤ  

 
ボス改めジョーカーの名でエデン政府官僚として、革命後のエデンを運営する。十数年後に信頼の出来る後任を推し、その当選を見届けて引退。ライヤとともに隠居生活を送った。あまり多くを語らぬ人物であったが、UGからの信頼は厚く、エデンだけでなくUGメンバーの意識改革にも全力を注ぎ、犯罪の抑止に努めた。
ライヤはキリサカ氏として政府顧問をしていたが、研究漬けの生活だった。特に航空法が撤廃されたエデンの航空技術に力を注ぐ。革命後のエデンはみるみるうちに発展を遂げたが、ライヤの死後、多くの大手企業が「ライヤ・キリサカに技術提供を受けて開発することができた」と告白して話題となる。エデン革命後の『黎明の三十年』の立役者と語り継がれる。




  アヤ & セシリア  

 
紗夜子やトオヤたちの周りに姿を現し、その子どもたちも存在を知っていたが、紗夜子たちが亡くなると、子孫たちに「あなたたちの危機に必ず現れるから」と約束して電子の海の彼方に姿を消した。その存在は最後まで紗夜子たちUG以外の誰にも知られることはなく、後の世に「電子の海に二人の女神がいる」という都市伝説を残すのみとなった。






エクスリス

紗夜子との別れが最後だった。以降、行方は知れない。























 排気ガスのにおいが、まだ眠気を飛ばしきれない頭を突き刺すようだった。くらくら、目眩がする。無数のエンジン音。人が吐き出す息。叩き付けるような靴音。空気、風の唸る騒音に、どこかにある街頭ビジョンから、歌姫の歌声が響いてくる。
 ぽん、と肩を叩かれた。
「おはよ! どうしたの。信号変わってるよ。早くいこ!」
「あ、うん!」
 手を引く友人の制服のスカートのひだは短く、この季節に寒くないのだろうかと思う。でもそう考える自分もさほど大差ないのできっと余計なお世話なのだ。素足をさらし、顔を塗って、自分を磨き輝かせて闊歩する、私たち。
「ね、ね。昨日のテレビ見た?」
 きらきら光るグロスを塗った彼女の唇が、こちらに向かって楽しそうな弧を描くから、なんだか楽しくなってきた。ぎゅっと握り合う手を強くして、小走りになって追いつき、笑って首を振る。
「ううん、見てない。昨日勉強してたら端末の前で寝落ちしてて」
「そっかあ。昨日さ、都市伝説特集やってたんだよ。ねえ、聞いたことない? 『電子の海の女神たち』って噂。ある日端末の前に綺麗な女の人たちが現れて、言うんだって……」


 翼を広げる機械の鳥の、高く果てしない空。
 数字と英字と無数のコマンドの波が行き交う、空事の海。
 現実と虚構、その狭間のどこにでも、彼女たちの笑い声が響き続ける。


「窓を開けてごらんなさい――って」



















The End.







本当にありがとうございました!
2012.11.16



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