―― 独 占 欲
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 出会った頃と比べてずいぶん伸びた、黒曜と真珠を混ぜた色の髪に指を絡め、囁く。
「……これは、私のもの」
 次は首に触れる。細く、力を込めれば簡単に手折れてしまいそうだ。どこよりも柔らかい皮膚に、爪を立てるか、歯を立てたい衝動に駆られていると、こくりと動いた喉の動きに、わずかな抵抗を感じ、つい唇を寄せてしまった。
「……これも、私のもの」
 唇は、顎から頬へ。手はこめかみに触れ、小さな頭を包みながら、慈しむように指先で顔を撫でる。きつく閉じられた目蓋が熱く、ぴくぴくと震え、声を出さないよう引き結んだ唇は、まるでこじ開けられるのを待っているように思えた。
「……これらは、私のもの」
 肩に、腰に。ゆっくりと、形を確かめるように手を滑らせる。身体を震わせてしまう自分を、囁き声に頬を染めていることを、思い知ればいい。誰がお前をそんな風にしたか、思い出せ。
 唇で唇に触れると、素直に開いた。内心でほくそ笑んだキヨツグだが、しかしまだ、すべてを与えはしない。
 口づけが深くなる前に離れると、彼女の瞳が開かれる。熱にたゆたう花びらのごとき目は、ぐらぐらと焦点が定まらない。さまよう視線を自らに絡め取り、何かを言う隙すら奪って、キヨツグは最後に囁いた。
「……お前は、すべて、私のものだ」



初出:110818
改訂:111224
改訂版:200929

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