あとがき
    


 戦う少女の物語を書こう。
 恋を知らない少女と長寿種族の長の物語を書いていた私は、当時募集されていたとある新人賞への応募を目指して、とりつかれたように前述の二つの物語を並行して書いていました。
 寝ても覚めても物語のことばかりで、あの頃の手帳を見ると、自分がその時期どの講義を欠席したかということが書かれています。登校しても途中で帰宅したり、そもそも学校へ行かなかったり、という状況で、執筆していました。当時は少し様子がおかしかったと、あの頃を知る友人たちは言います。
 そして書き上げた原稿は無事に投稿され、二次選考までを突破するというビギナーズラックを発揮してしまい、そのせいで取り憑かれたように公募生活が始まるのですが……一度締めたこの物語の結末を見たいという気持ちは、自分の中でずっとくすぶっていました。
 幸運にも様々に書きたいものがあり、新しい物語を書きたいという気持ちが大きかったこともあって新作の書き下ろしが続き、竜約の物語の完結は先延ばしにされてきました。けれど、ずっとこの物語を好意的に受け止めていてくれる方々の存在や、竜約と並行したもう一つの物語を再び見つめるに当たって、最後まで書こう、と思ったのが、2014年の年末、2015年の始まりでした。
「GRAYHEATHIA」と「竜約の光環」は、時代はかなり隔てられているものの、地続きの物語です。2015年後半から2016年、その「GRAYHEATHIA」を同人誌版として新しく書き下ろすに当たって、新約と呼び表したのは、この「竜約の光環」がその世界の新しいしるべになるからという思いがあったためでした。
「竜約の光環」の物語が分岐したものが二つの「GRAYHEATHIA*グラィエーシア」という物語だから、竜約はちゃんとエンドマークをつけよう、と奮い立って、2016年。こうして、最後のお話をお届けできることを、幸運に思います。

 少女が神格を得る、というモチーフは、私の作品によく用いるものなので、ああ瀬川の話だな、と笑っていただけていたらいいのですが……。「GRAYHEATHIA」も「竜約の光環」も同時期に書いていたせいで、結果的に同じ形を用いることになってしまいましたが、瀬川は本当にこういう設定が大好物なのでご容赦ください。
 竜約における様々な要素が引き継がれ、「GRAYHEATHIA」の結果に繋がるのですが、そこまでを書くには長すぎるし、主人公はキサラギたちではないと思いますので、割愛します。けれどもしかしたら、いつか書くこともあるかもしれません。
 ちっぽけな存在の、けれど神様と呼び表されるようになるキサラギとセンの二人は、未来へ続く道において、たくさんの人々の背中を押すことになります。帰りなさい。生きなさい。そう送り出してくれる大きな存在が、祝福と呼ばれるものが、その世界にあることを、作者として喜ばしく思っています。
 読んでくださった皆様には、どう感じていただけたでしょうか。

 長く拙い物語を、最後までお見守りくださり、誠にありがとうございました。
 竜約の物語は一度閉じ、彼女たちにはこれからは少しの間ですが平和な日々が訪れます。そこまでも楽しんでいただけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、またお会いできることを願って。

    



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